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「潔癖社会」純度上昇中【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第22回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第22回

 

【スリリングなドライブ】

 

 忙しい庭仕事も、ようやく一段落しそうである。というのも、植樹をする季節がそろそろ終わりだから。草もそれほど伸びなくなるので草刈りの頻度も下がる。緑が生い茂り、庭園内全域が木陰になったし、夜に雨が降る日が増えたから、水やりも楽になる。その分、工作に勤しんでいる。今年の初めから、模型のエンジンに熱中していて、エンジンで走る機関車や戦車を幾つも作った。オイルで手を真っ黒にして、ぶんぶん大きな音を立てて遊んでいる。

 先日、僕のクラシックカーを奥様(あえて敬称)が初めて運転した。山間のワインディングロードを30kmくらい走った。僕は助手席でときどきギアチェンジの指示をしただけ。なかなかスリリングだった。4年間、調整や部品交換をした結果、僕以外でも運転ができるほど調子が良くなったのだ。ただ、奥様は「ギアを換えないといけない車」に懲りたのか、その後「運転したい」とはおっしゃらない。

 

庭園内はすっかり木陰になった。森の中の涼しさと静けさを、都会の人は知らない。ただ、ガーデニングをするには、あらゆる植物が大きく育たない。農地というのは、樹を伐採した人工環境だということを知らされる。

 

文:森博嗣

 

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森博嗣 極上エッセィ『静かに生きて考える   Thinking in Calm Life

✴︎絶賛発売中✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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